米国のランド・ポール上院議員が、フォートノックスに保管されている金準備の物理的監査を支持すると発言し、話題を呼んでいる。この提案は、金融ニュースサイト「ゼロヘッジ」の報道がきっかけとなり、議論が活発化している(ZeroHedge, 2025)。
フォートノックスの金準備とは?
フォートノックスは、米国ケンタッキー州にある金塊の保管施設であり、米国財務省が管理する最大の金備蓄の一つとされる。その金準備量は約4,581トン(4,581,000kg)とされ、世界最大級の金保有量を誇る(U.S. Department of the Treasury, 2024)。現在の金価格を1グラムあたり9,500円(2025年2月時点、World Gold Council)とすると、その価値は約43.52兆円に相当する。しかし、その実態は長年にわたり不透明であり、1974年を最後に全面的な監査が行われていない。これにより、一部の政治家や経済アナリストは、実際に保管されている金の量や状態に疑問を抱いてきた。
ランド・ポール議員の発言とその背景
ランド・ポール議員は、監査を実施することで米国の財務の透明性を確保し、納税者に対して責任を果たすべきだと主張している。彼の発言は、ゼロヘッジが最近取り上げた「米国の金準備は本当に存在するのか?」という疑問に呼応する形でなされた(ZeroHedge, 2025)。ポール議員は「やるべきだ(Let’s do it)」と明言し、物理的監査の必要性を強調した。
なぜ今、監査の必要性が問われているのか?
金準備の監査に関する議論が再燃した背景には、以下のような要因がある。
- インフレの進行 – FRB(米連邦準備制度)の金融政策により、米ドルの価値が揺らぐ中、金の保有量が本当に十分なのか疑問が生じている(Federal Reserve, 2024)。
- 中央銀行の金準備強化 – 世界各国の中央銀行が金の保有量を増やしている中、米国の金準備の透明性が求められている(World Gold Council, 2025)。
- 政府の信頼性の問題 – 過去に何度も米国政府の財務状況に関する不透明性が指摘されており、監査の実施は信頼回復につながる可能性がある(U.S. Congress Reports, 2024)。
日本への影響と類似事例
日本でも、財務省や日銀の外貨準備・金準備に関する透明性が度々議論されている。日本の金準備量は約845トン(845,000kg)であり、世界で9位の規模を持つ(日本銀行, 2024)。現在の金価格を基に換算すると、日本の金準備の価値は約8.03兆円に相当する(World Gold Council, 2025)。特に、2000年代以降、日本の金準備は大きな変動がなく、外貨準備の多くを米ドル建て資産に依存している。このような状況の中で、米国の金準備監査が実施されれば、日本の金融政策や金の保有戦略にも影響を与える可能性がある。
まとめと今後の展望
ランド・ポール議員の発言を受けて、フォートノックスの金準備監査が実現するかどうかは今後の政治的議論次第となる。仮に監査が実施され、金の保有量に疑念が生じれば、米国の財政信頼性やドルの価値に影響を与える可能性がある。一方で、透明性が証明されれば、米国の金融システムへの信頼を強化する結果となるだろう。
この動向は、日本を含む国際金融市場にも波及する可能性があり、今後の進展に注目が集まる。