## 📣 プロパガンダ・軍事的な文脈
この分野では、意図的に世論を操作したり、敵対する相手からの批判を逸らしたりする目的で、論点のすり替えが戦術として用いられます。
- Whataboutism(ホワットアバウティズム) 「Aが問題だ」と批判された際に、「Bはどうなんだ?(What about B?)」と全く別の、あるいは相手側の問題点を持ち出して論点をそらし、批判を相対化・無効化させようとする手法です。冷戦時代にソ連が西側からの人権批判に対して多用したことで知られます。 広陵高校の例で言えば、「学校の暴力対応が問題だ」という批判に対し、「SNSでの誹謗中傷はどうなんだ?」と問題を提起し返すのが典型的なWhataboutismです。
- Straw Man Fallacy(藁人形論法/ストローマン) 相手の主張を、歪めたり、一部だけを誇張したりして、脆弱な「藁人形」のような主張に仕立て上げ、それを攻撃することで、あたかも元の主張に反論できたかのように見せかける手法です。 例えば、「暴力問題への徹底調査を求める」という正当な世論を、「感情的なネット民による魔女狩りだ」という藁人形に置き換えてから、「我々はそのような不当な攻撃の被害者だ」と主張するようなケースがこれにあたります。
- Dead Cat Strategy(死んだ猫を投げる戦術) 議論が不利になった際、非常に衝撃的で誰もが注目せざるを得ない別の話題(死んだ猫)をテーブルの上に投げ込むことで、人々の関心をそちらに強制的に向けさせ、元の不利な議論を忘れさせるという、攻撃的な論点ずらしです。
## ✍️ 論理学・修辞学的な文脈
議論や討論において、論理的な誤り(虚偽)として扱われるものです。
- Ignoratio Elenchi(論点のすり替え/イグノラティオ・エレンキ) これが「論点のすり替え」を指す最も正式な論理学用語です。証明すべき命題(論点)とは無関係なことを論じ、それを根拠に元の命題が証明されたかのように結論づける誤謬(ごびゅう)を指します。
- Red Herring(燻製ニシンの虚偽/レッド・ヘリング) 議論の主題から人々の注意をそらすために、意図的に無関係な話題を差し挟む手法です。その昔、燻製ニシンの強い匂いで猟犬の追跡を逸らしたという逸話が語源とされています。論点を「ずらす」というよりも「逸らす」「惑わす」というニュアンスが強いです。
## ️♂️ ニュース・広報的な文脈
政治家や企業の広報担当者が、メディア対応などで不利な質問をかわすために使うテクニックを指す言葉です。
- Pivot(ピボット) 文字通り「軸足を移す」という意味です。都合の悪い質問をされた際に、その質問に直接は答えず、「それはさておき、より重要な問題は…」といった形で、自分が話したい得意なテーマへと巧みに話の内容を転換させる技術です。
- Spin / Spin Doctoring(スピン/スピン・ドクタリング) 情報の提示の仕方を工夫し、世論や大衆に与える印象を操作することです。論点のすり替えは、このスピン・ドクタリングにおける重要なテクニックの一つです。