2025年3月、札幌市西区にある建設会社「花井組」の社員寮で、社長が従業員に暴力を振るう様子が防犯カメラに記録されていた。この事件の衝撃は、映像が公開されるや否や大きな波紋を広げた。何よりも注目すべきは、この企業が札幌市から「SDGs認定企業」として表彰されていたことだ。
動画に対するコメント
日常的に繰り返された「持続可能な」暴力
暴行は、コイの水槽掃除を命じられた従業員が社長の妻に対し、少し語気を荒げたことが発端だったという。たった一言「わかった」が、社長の“逆鱗”に触れた。
防犯カメラには、殴る、蹴る、髪を掴んで揺さぶる、膝蹴り、平手打ちなど、約1時間にわたる暴行の一部始終が映っていた。被害者男性によると、その場には社長の妻と常務も同席していたが、誰一人止めようとはしなかった。
さらに驚くべきは、社長が暴力を振るった直後にかけた言葉だ。
「俺も忘れるから、お前も忘れろ」
この言葉が、会社内での暴力がいかに「常態化」し、「黙認」されてきたかを物語っている。
「SDGs企業」の実態と札幌市の責任
花井組は札幌市からSDGs推進企業として認定を受けていた。だが、今回の暴行事件は、表面上の認証と、実態とのギャップを露呈するものとなった。果たして市の認定制度は、企業の「持続可能性」や「人権尊重」をどこまで真剣に審査していたのか。
SDGsの理念は、「誰一人取り残さない」ことにある。だが、実際に社員が暴力によって傷つき、声を上げられない環境が放置されていたのなら、それは「持続可能な暴力」を温存していたに等しい。
「黙っていた上司も共犯」——元社員の怒り
暴行を受けた男性は、会社を辞めた後も社長の親族から脅迫的な留守電を受けたと語る。
「お前いい加減にしろよ」「本当にさらいにいくぞ」
このような行為が放置され、加害者側がいまだ組織を運営しているとすれば、それは法治国家としての倫理の崩壊を意味する。
男性は語る。
「なぜ、止めるべき立場の上司が見て見ぬふりをするのか。それが一番悔しい」
被害届提出と今後の焦点
男性はすでに警察に被害届を提出しており、刑事事件としての捜査が進む見込みだ。一方で、花井組側は「弁護士に聞いてください」として、会社としての説明責任を放棄している。
SDGsという看板の裏に隠れた組織的暴力。今回の事件は、企業の「看板」ではなく「実態」にこそ目を向ける必要があるという、重い警鐘である。