その他

公的年金の受給タイミングをどう選ぶ?繰上げ・繰下げのメリットと落とし穴

SHARE

年金制度の改正で受給年齢が拡大

2022年4月、年金制度が改正され、年金の受給開始年齢は従来の60~70歳から、60~75歳へと拡大されました。これにより、ライフスタイルや経済状況に応じた柔軟な受給タイミングの選択が可能になりました。

年金の受け取り年齢によって金額が変わる

たとえば、65歳で100万円の年金を受け取る予定の人が、60歳に繰り上げた場合は約76万円に、75歳に繰り下げた場合は約184万円にまで増加します。ただし、これは単純な「得・損」で判断できるものではありません。


繰下げ受給のメリットと注意点

ゆとりある老後収入を確保できる

年金を繰下げることで、毎月の受給額は最大84%増加します。十分な老後資金があり、できるだけ安定した収入を得たい人には魅力的な制度です。

想定外の負担が増えるリスク

年金受給額が増えるということは、課税所得も増えるということ。結果として、所得税・住民税・健康保険料などが増加する可能性があります。また、「加給年金」が一時的に支給されない場合もあり、特に配偶者が年下の場合は慎重な判断が必要です。

遺族年金や制度併用にも制限

年金を繰下げたとしても、遺族年金の金額が増えるわけではありません。また、基礎年金と厚生年金の受給タイミングをずらして調整するなど、制度を柔軟に活用する方法もあるため、個別にシミュレーションすることが重要です。


繰上げ受給のリスクと落とし穴

一生続く年金額の減額

60歳で繰上げ受給を選ぶと、年金額は約24%減額され、これが一生涯継続します。将来の生活費に不安がある人にとっては、大きな収入減となる可能性も。

障害年金や遺族年金との併給ができないケース

繰上げ受給をしていると、障害年金や配偶者の遺族年金を重複して受け取れない場合があります。制度の重なりや制限について事前に知っておくことが重要です。

任意加入の機会を失う可能性も

過去に未納期間がある人は、60歳以降に「任意加入」で補填が可能ですが、繰上げ受給を始めてしまうとその選択肢が閉ざされる可能性があります。


「ゆとりのはずが後悔」にしないために

実例から学ぶ繰下げの注意点

実際に年金の繰下げを選んだある男性は、月額19万円の予定だった年金を27万円まで増額することに成功。しかし、結果的に税金や社会保険料の負担が増え、想定より手取りが減ってしまいました。

また、加給年金の制度を理解しておらず、本来受け取れるはずだった数十万円を失ってしまったことに後悔を感じたといいます。

ライフプランと合わせてシミュレーションを

年金制度は非常に複雑であり、単純な「損得」では語れません。自分自身や配偶者の年齢差、持ち家の有無、退職金や資産状況などをもとに、ファイナンシャルプランナーや年金事務所など専門家の力を借りながら、適切な受給時期を見極めましょう。


快適な老後を過ごすための一歩は「準備」

固定費の見直しで生活をスリムに

年金受給額に合わせて生活費を調整することも、老後を快適に過ごすための大切な準備です。特に、住居費や保険料などの固定費は一度見直せば長期的に効果が期待できます。

保険も現役時代と老後で最適解は違う

家族構成や健康状態の変化に応じて、保険の内容も見直しが必要です。「必要な保障」と「不要な保険料負担」のバランスを取ることが、安定した老後生活へのカギになります。


自分に合った年金受給を考える

年金の繰下げ・繰上げは、あくまで「選択肢」のひとつです。大切なのは、「どの選択が自分の生活に合っているか」という視点。老後に安心して暮らすためには、制度の仕組みを正しく理解し、後悔のない選択をしていくことが何より重要です。

おすすめの記事

最新の記事